クレーム対応会話では、必ず次の事をメモに残してください(万一訴訟等へ発展した時に経過立証に役立ちます)。
○クレーム対象の事故や事件の内容
「事故発生日時」「発生場所」「事故状況」「被害者」「損害内容」「賠償請求者・被害者との関係」
○クレーム者の主張
「対応日時と対応相手」「当方側の落度の主張内容」 「 損害賠償請求の主張内容(具体的な内容があればその内容)」
○クレーム対応履歴
「対応日時」「対応相手」「相手の主張」「相手の主張への返答」
※クレームとは自分の被った損害を相手に説明し、その損害に対して相手に損害の補償を要求することをいいます
法律では「 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とされています
クレームは大きく以下の3つに分けることができます
信義誠実に基づく正当な要求です クレームというより「利用者の声」として大切にあつかう意見として受け止める要求です 相手の立場を尊重し誠意をもって対応することが重要です |
自分の主張にこだわり、感情的な理不尽な要求へと突き進でくるクレームです 当初は悪意を持っていない人が、自分のこだわりで「正しい要求や苦情である」との考えで起こすクレーム行為です 相手の対応に、感情的不満や不審を感じることで交渉中に次第に理不尽な要求にエスカレートし信じられないような行動を起こすことがありますので注意が必要です |
悪意あるクレーマーです 意図的に、相手の弱みを探し出し、不当に経済的利益を得ることを目的としたり、追い詰めることで相手の地位を失墜させることを目的とする行為です 始めは脅迫的態度ではなく、静かな語り口で一見理にかなったようなストーリー展開でじりじりと追いつめる要求をして来ます 危険を感じたら「自分の判断範囲を超えている」と対話を拒否する勇気が必要です |
<クレーム対応話法の注意点>
①ホワイトゾーンクレーム(常識苦情)対応 |
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クレームというより「利用者の声」として大切にあつかう意見として受け止める要求です相手の立場を尊重し誠意をもって対応することが重要です <トーク例1> (当方側に不備があると思われる事故) 相手の主張をよく聞き、要求や苦情に内容をメモしながら反復確認します。 相手 「・・・の度の事故には、治療費関係費と私の休業補償等をして頂けるのでしょうか」 当方 「大変申訳ありませんでした、当社ではこの様な事故に備えて保険制度を設けています、お話しをうかがった内容について施設の管理や業務状況に関して確認いたします、その上で施設の管理や運営に起因した事故の場合の補償と再発防止対策について再度お話しさせて頂きたいと思います」 <トーク例2> (当方側に不備がないと思われる、相手の不注意に起因する事故) 相手の主張をよく聞き、疑問点については反論ではなく当方側としての立場について説明し理解を求めます。 相手 「・・・の度の事故には、治療費関係費と私の休業補償等をして頂けるのでしょうか」 当方 「この度の施設内(業務)で起きた事故に関しましては深くお見舞い申し上げます」 「状況を調査しましたところ、施設(業務)の管理や運営に関しては日頃から十分な注意をしておりますが、この度の事故は事故防止対策を施すことが困難な事故でした」 「施設(業務)で起きた事故に対しては人道的責任や道義上の責任もありますので、おケガされた方の救助救援活動に関しては応急処置や必要に応じて医療機関への搬送など誠意をもって対応させて頂いております、申訳ありませんが損害賠償対応はできかねる事をご理解ください」 ポイント 相手の立場に立ち理解を示しながら、肯定できるところは誠意をもって対応していく様にして下さい |
<クレーム対応話法の注意点 >
②グレーゾーンクレーマー(非常識苦情) 対応 |
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もともとは普通の人が、自分の思い通りにならなかったり相手の対応に不満を感じて次第にエスカレートし、社会常識から外れた理不尽な要求へと突き進んでくることがあります
、 クレームの目的やきっかけが何かを見極めることが重要となります。 最後は訴訟を起こされても良いとの気持ちを持つことも大事です。 |
クレームがエスカレートする要因をつかむことが大切です ・自分を肯定するために相手に責任を求める感情 ・自分が守る者や愛する者に害をおよぼした相手に対する憎しみ ・法や倫理、宗教に基づく正義心 ・相手より自分が優位的立場に位置している強権意識 ・損をしたくない、あわよくば私利を得ようとする経済的欲望 |
最初は自分の正直な思いからのクレームなので、エスカレートして行かない対応を心掛けます 「はい」「そうですか」等相槌を交え相手の話をよく聞き、「でも」や「ただ」等の言葉を避けて「失礼しました」等に言いかえることで相手が自分のことを理解してくれていると感じてもらいます。相手の怒りを静めるためのおわびも必要です、ただしそれは、非を認めるおわびではなく、不快な思いをさせてしまったり、不便を掛けてしまったり、手間を取らせてしまったりしたことへのおわびです。 <初期の会話> ここまでは「ホワイトゾーンクレーム」の対応をして下さい、ここで使ってはいけないNGワードがあります Dから始まる「D言葉」です「ですから」「だって」「でも」といった反論言葉です 感情的に一方的にまくしたてられるとついつい言いたくなる言葉ですが、それでは火に油を注ぐだけです ひたすら我慢し、相槌をうまく使ってSから始まる「S言葉」に変えます 例えば「ですから」と言いたくなるのをこらえて、「そうなんですね」と相槌を打ち、「失礼いたしました」と言い換え「すいませんでした」と対応すると、相手は自分のことを理解してくれたと感じるでしょう ポイント 被害に遭われた方やご家族が、自分の家族や友人に接せるように事故後の対応をしてくれたと感じてくれれば理解が深まりこの段階で解決の方向が見いだせます。 事故がどのようにして起きたかに状況を時系列で説明をする。 例:いつ、どこで、何をしてる時、どのような状態で起きた事故か。 事故後の対応が人道的または道義的な信義と誠意に沿って行われた説明をする。 例:応急手当、救急処置、病院への搬送、ご家族への連絡・・・等 この段階では、事故の責任より、治療を優先し完治するお見舞いの気持ちを伝える 施設側が、被害者の事より責任逃れを優先していると感じさせない事が重要です <途中からの会話> 一定時間(目安5分~10分)話しに進展がなかったら、そこには必ず何らかの理由があります、次の段階では受け身の姿勢で話を聞き、相手の動機や目的を見極めます、話を聞く時間 (目安30分程度)を決めて切り上げるようにしないと、相手のペースにはまってついつい「D言葉」を使ってしまったり、出口が見えない苦しさから安易に要求をのんでしまったりすることになります。この段階で解決を急ぐと、ホワイトゾーンクレームからグレーゾーンクレーマーへと要求がエスカレートするので要注意です ポイント 相手が納得せず、話の言葉尻をとらえエスカレートする要因を冷静に見極める クレームがエスカレートする要因 ・自分を肯定するために相手に責任を求める感情 事故状況をもう一度説明し、事故の予測や事故回避が、通常求められる範囲を超えていたことを説明 ・自分が守る者や愛する者に害をおよぼした相手に対する憎しみ ・法や倫理、宗教に基づく正義心 ・相手より自分が優位的立場に位置している強権意識 ・損をしたくない、あわよくば私利を得ようとする経済的欲望 <目安30分を過ぎてからの会話> 30分を過ぎても相手が理不尽な要求を繰り返すようなら、ブラックゾーンクレーマー同様「ギブアップトーク」を使うようにします 「今すぐ答えろ!」「今すぐ来い!」などと迫られたら、Kから始まる「K言葉」に変えます「困りました」「苦しいです」「怖いです」といった言葉を使い「お急ぎかもしれませんが、今すぐというわけにはいきません」と返せばよいのです。 ギブアップといっても相手の言いなりになるのではなく、一歩斜め後ろに身を引いて相手の土俵に乗らないようにするのです。 |
③ ブラックゾーンクレーマー(悪意苦情) 対応 |
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悪意ある過剰要求には「ギブアップトーク」するのが得策です、ギブアップといっても、相手の言いなりになるわけではありません 相手の土俵に上がらず対応できないことや即答できないことを繰り返し伝え、攻勢をかわす事です 。 言葉尻をつかまれないよう、Kから始まる「K言葉」を使う様にします 「困りました」 「苦しいです」 「恐怖を感じます」 といった言葉です |
<トーク例> 相手「・・・の様な事があり、このまま放置しておく訳には行かないので、貴方の所で解決すべき問題だが、それは無理でしょうからここは金銭的に解決してほしい。」 当方「そうですか、お話はうけたまわりましたが現段階ではお詫びするしかありません」 相手「今謝りましたよね、謝ったということは非を認めたのですね」 当方「困りました、非を認めたのではなく、お気持ちはわかりますという意味ですが私どもで責任をとれる問題ではありません」 相手「悪いと思っているなら、責任をとるべきでしょう」 当方「そのように責められると恐怖を感じます、これ以上私では対応できません」 相手「責任者の方とお会いして話合いたいのでこれからお伺いしたい」 当方「苦しいです、この段階でお会いする事はできません 、今おうかがいした話を法律的に整理できる専門家とも相談した上でご返事しますので連絡先をお教えください」 ポイント 金銭目的や脅迫の悪意的クレームは、相手の話に引きずりこまれる前に交渉を打ち切り、法律の専門家の方に相談してください 場合によっては行政機関や警察に被害相談する方法もあります。 ただし、1件の相談だけでは事件案件として扱うわけではありません。 民民間の解決解決が優先され、相談を受けた段階では即対応できないケースがほとんどです。 ましてやお客様とのトラブルという段階では、事件性や緊急性が判断しにくい案件となり、その傾向は強くなります。 最後は話を打ち切り、まずは保険関係者にご相談ください。 |